彼がメガネを外したら…。
「どんなものにでも、そこに歴史があるから、いろんなもののルーツが気になる性質(たち)でね。子どもの頃から『昔の人はどうしてたんだろう?』というのは、俺の永遠のテーマなんだ」
いかにも史明らしくて、少年時代の史明を思い描いて、絵里花は思わず顔をほころばせる。
「じゃあ、戦国時代の火縄銃なんかは、どうしてたんですか?鉄砲を撃つたびに、火打石で火を点けてたわけじゃないですよね?」
「ああ、それは。火縄に火を点けたままにしておいたんだ。火縄は硝石の溶液に浸して作られてて、1メートルくらいあるから、数時間は火種が保たれる。戦の時は、消えてしまった時に備えて、火の点いた予備の火縄を何本か準備して、物干し台のようなものにかけておいたらしい。行軍中や雨の時でも、火種だけは絶やさないように、胴火(どうび)と呼ばれる携帯用の入れ物に火の点いた火縄を差し入れて、持ち歩いてたんだ」
どうやら史明は、歴史のことに関わると饒舌になるらしい。次から次へと出てくる史明の知識に、絵里花は驚くというよりも微笑ましく感じた。本当に史明は、心の底から歴史を愛しているんだと思った。
史明もさすがに、一方的に喋りすぎたと感じたのだろうか。絵里花の様子を窺うように声を潜め、それからしばらくして絵里花に問いかけた。