彼がメガネを外したら…。
「さあ、明るいうちはぐずぐずしてるわけにはいかない。今日中に、この山を出られるといいんだが……」
絵里花も気を取り直して、頷いた。
「それじゃ、昨日のお弁当の残り。傷んでしまう前に食べてしまいましょう」
二人は残しておいたおにぎりを、一つづつ食べた。食べながら、史明が地図を開いて、今いる位置を推測する。
「もしかすると、すでに磐牟礼山にはいないのかもしれないな」
「だとしたら、隣の山まで来てしまってるということですか?」
「……かもしれない。でも、こちら側のどの山のどこにいても、西側にはこの農免道路があるはずだ。西に向かおう」
史明がそうやって方針を決めてくれたので、早速動き始めることにした。
今食べたおにぎりで、もう食料もなくなった。食べられないと、体力も消耗する。ましてや史明は、怪我を負っている。絵里花は口に出しては言わなかったが、心の中ではとても焦っていた。
二人は、軋む体を奮い立たせて立ち上がった。絵里花が史明の腕を肩に載せて体を寄り添わせる。史明も絵里花に促されるように一歩踏み出して、二人は昨日と同様に歩き出した。