彼がメガネを外したら…。



「さあ、明るいうちはぐずぐずしてるわけにはいかない。今日中に、この山を出られるといいんだが……」


絵里花も気を取り直して、頷いた。


「それじゃ、昨日のお弁当の残り。傷んでしまう前に食べてしまいましょう」


二人は残しておいたおにぎりを、一つづつ食べた。食べながら、史明が地図を開いて、今いる位置を推測する。


「もしかすると、すでに磐牟礼山にはいないのかもしれないな」

「だとしたら、隣の山まで来てしまってるということですか?」

「……かもしれない。でも、こちら側のどの山のどこにいても、西側にはこの農免道路があるはずだ。西に向かおう」


史明がそうやって方針を決めてくれたので、早速動き始めることにした。


今食べたおにぎりで、もう食料もなくなった。食べられないと、体力も消耗する。ましてや史明は、怪我を負っている。絵里花は口に出しては言わなかったが、心の中ではとても焦っていた。

二人は、軋む体を奮い立たせて立ち上がった。絵里花が史明の腕を肩に載せて体を寄り添わせる。史明も絵里花に促されるように一歩踏み出して、二人は昨日と同様に歩き出した。


< 90 / 164 >

この作品をシェア

pagetop