彼がメガネを外したら…。
「……ずっと眺めていたい気持ちは分からないでもないが、そろそろ行こうか。まだまだ先は長い」
絵里花も頷いて、また肩を組んで歩き出した。トンボが飛び交う秋ののどかな空気の中、コスモス畑の真ん中を突っ切って農免道路へ向かう。
そして、足場のいい農免道路に着いたとき、一台の軽トラックが通り過ぎて行った。その軽トラックは少し行ったところで停車したかと思うと、すごい勢いでバックして戻ってきた。
何事かと、史明と絵里花がそれを注視していると、軽トラは目の前で停まりドアが開いた。
「こんなところで、まだ調査してたのかい?」
「あ……!!」
そこに現れてくれたのは、晶だった。
あまりにも待ち望んでいた人が表れてくれたような気がして、絵里花にはつなぎの作業服を着る晶の姿が、神様のように光り輝いて見えた。
「ああ!古庄さん~。通りかかってくれて、助かりました~。岩城さんと私を、昨日の車を止めた場所まで、乗せていってください〜」
絵里花は、もうほとんど半泣き状態で、晶に助けを求めた。
「……って?え?この男は、岩城くんか?」
と、晶は目を丸くして、史明を凝視する。メガネをかけていない史明は、晶の目にも別人に見えたらしい。視線を感じた史明は、極まり悪そうに目を逸らした。