彼がメガネを外したら…。
「岩城さん、メガネが壊れてしまって、それで岩場で足を怪我してしまって。その上、道に迷って……。今やっと山を抜け出して来たんです~」
「ええ!?じゃ、昨晩は二人っきりで、山の中で?!」
さすがに晶も驚いて、目を丸くして問いかけてくる。
「そうなんです。もう、寒くて寒くて……。遭難するかと思いました」
絵里花の説明を聞いて、その事情の深刻さは伝わっているはずなのに、晶は思わずニヤリと笑いを浮かべると、絵里花に近づいて耳打ちする。
「……そんなに寒かったんなら、心置きなく岩城くんに抱きつけたんじゃないかい?」
それを聞いた途端、絵里花の顔が赤くなる。その反応は、詳しくを語らずとも、昨晩の出来事を如実に明かしていた。
意味深な二人の行為に、史明は涼しい目元で訝しそうな視線を投げる。
「とにかく、俺と望月さんを連れて行ってくれませんか?この足じゃ、歩くのがままならないので……」
それを聞いて、晶もからかうのをやめて真顔になった。
「分かった。それじゃ、乗りなよ。ちょっと遠いけど、診療所まで連れて行ってあげるよ」
「ありがとうございます」
絵里花と史明は、声を揃えて頭を下げた。