シュガーとワルツは踊らない♡ドキドキ同居生活♡
「うーん、もうちょっと前髪とか切っても良いと思うんだけどな」
「確かに」
男子にしては長めの前髪、黒いフレームの眼鏡が彼の目元を見え難くしていて
近付かないと表情もよく分からない感じだ。
まあ、関わり無いし近付く事なんて無いと思うんだけど。
砂藤くんは数学の参考書を黙々と読んでいるみたいだった。
「真面目だねぇ」
「本当に」
いちると顔を見合わせて頷く。
自習になったとは言え、数学の授業中なのには変わらないから本来の正しい学生の姿とも言えるんだけど。
『おい消しゴム投げんなって!』
『俺じゃねぇよ!』
先生がいないのを良い事に、ふざけ合う男子達や
『ーーでね、昨日の番組でさぁ』
『あー、あれ超ウケたよね!』
一見、教科書を開きながらも近くの席の子とひそひそ声でお喋りに夢中になっている女子が大半で “自習とは?” って感じだった。
学生って本当、こんな感じ。
斯く言う私も例外ではない。
「いちる、あのさ」
既に机の方に身体を戻してノートを開いているいちるに後ろから話し掛ける。
「んー何?」
そうして自習時間が終わるまで殆ど数学の勉強をする事無く、半ばいちるを付き合わせた形で女子トークに花を咲かせたのだった。