旦那様は甘くて意地悪
奈美さんも一也(かずや)さんも小さい時から知っているし、凄く優しくしてくれた。
でも直樹さんとは子供の時に会わなかった理由は、小さい時から知っていて、許婚だって言われるよりも、大人になってから会って実は許婚でとかの方がいいんじゃないって理由だったらしいけど……。
その後は奈美さんの手料理をご馳走になり、二人は帰って行った。
確かによく知ってる人だったけど、うちの会社の社長とは知らなかった……。
そして夜になり、部屋で眠ろうとしたら直樹さんに腕をつかまれた。
「何処に行ってるんだ?」
「ど、何処って部屋に……」
「部屋はこっちだろ?おいで」
そう言って私の腕を引っ張り寝室へと向かった。
だけどベッドは一つしかなく、奈美さんの"孫の顔が早く見たい"って言葉が頭を過る。
えっ、でもっ、えっ!?
頭の中はパニック状態で、そんな私を直樹さんは抱きかかえてベッドへと下ろす。
「もう逃げ場はなくなったな円」
そう言って私の眼鏡を外した。
ぼんやりとしか直樹さんの顔が分からずに、少しの恐怖とドキドキと、何が何だか分からなかった。
「そんな怯えるなよ、無理やり襲ったりしないし嫌われたくないしな。ちょっと意地悪しただけ。でもこれくらいはいいだろ?」
そう言って私の唇に直樹さんの唇が重なった。
一瞬にして離されたけど、初めてのキスに顔が真っ赤だと思う。
「何もしないからこうして寝るくらいはいいよな?」
そう言って私を抱きしめると"オヤスミ"と言った。
初めての事で中々眠りに就けなかったけど、疲れてたのもありいつの間にか眠っていた。