王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
——ロニーとキスをしている。
その事実に頭が混乱を通り越して真っ白になってしまう。カチカチに強張った身体は指一本動かすことも出来ず、呼吸の仕方さえも分からなくなってしまった。
ロニーの唇が角度を変え舌を差し込んで来ようとするが、リリアンの全身は鉄の塊になってしまったように動かない。
歯列を開かないリリアンに、ロニーはあきらめたのか唇を離した。けれど顎を掬っていた手で頬を撫でさすると、そのまま顔に掛かっていた髪を除け今度は耳朶を柔らかく食んできた。
「ひ、ゃっ……!」
ゾクッとした冷たい熱に、肩が勝手に跳ねる。ロニーはそれを抑えるようにリリアンの身体を自分に押し付け強く抱きしめた。
「ひ……や、ぁ……っ、やめて……!」
恐ろしくも甘美な刺激のせいで、衝撃のあまり止まってしまっていた思考が蘇った。
力づくで身体を押しても無駄だと悟ると、リリーはこぶしを握りしめロニーの肩をポカポカと叩く。
「やだ、やだ……っ! 駄目、ロニー! こんなことしちゃ駄目ぇ……っ」
耳を食まれねぶられるたび、大きく骨ばった手で背をさすられるたび、リリアンは肺の奥から甘い息が漏れそうになるのをなんとかこらえる。
けれど、背を撫でていた手が首筋までくすぐるように辿ってきたとき、リリアンはたまらず「は、ぁ……んっ」と上擦った声をあげてしまった。
とっさに唇を噛みしめたがもう遅い。ロニー相手にいやらしい声を出してしまった自分が許せなくて、悔しさと悲しさの混じった涙が一気に込み上がってきた。