王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「や……、もういやぁ……っ、離してロニー、離してよぉ……っ」

涙をボロボロと溢れさせながら、ロニーの肩を叩き、服を引っ張り、爪を立て、がむしゃらに抵抗する。

ギルバートが弟なら、ロニーのことはずっと兄のような存在に思っていた。昔は憧れたこともあったけれど、それは少女なら誰しも見る夢みたいなものだ。こんな風に彼と性的なふれあいを望んだことなど、一度もない。

いつだって冷静で紳士然としていて優しかったロニーを、リリアンは信頼していた。そして何より、彼がギルバートにとって家族とも言える存在であることが、今の状況をリリアンにとってより残酷にしていた。

ロニーがどういうつもりでこんなことをしているのかは分からない。けれど、これはギルバートに対する明らかな裏切りだ。

リリアンがギルバートにとって唯一とも言える心の拠り所であることを、ロニーが知らないはずがないのだから。

もしもこのことをギルバートが知ったなら、どれほど傷つくことだろうか。そう思うとリリアンは悲しくて悲しくて涙が止まらない。

けれどロニーは彼女がどんなに泣きじゃくろうが、憐れな抵抗を見せようが、行為をやめる様子を見せなかった。

「やめて……、お願いだからぁ……っ」

グズグズと泣きながら懇願する間にも、ロニーは耳朶から輪郭を綴ってキスをしてくる。そして頬を流れ落ちてきた涙を舌で掬うと、そのまま唇にまで舌を這わせた。

「ぅ、んん……っ、ん、ゃ……っ」

リリアンの瑞々しい果実のような唇を、ロニーの舌がねぶってくる。再び唇を重ねられ、深く口腔に舌を入れられそうになった。そのとき。

「……っ!?」

ロニーが切れ長の瞳を見開き、唇を離した。その隙をついてリリアンは彼の身体を強く押し離す。

初めて動揺を見せたロニーの口もとからは、赤い鮮血が微かに零れていた。
< 103 / 167 >

この作品をシェア

pagetop