王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
ふいにギルバートの名を出されたことで、リリアンの胸がドキンと跳ねた。自分はロニーにキスされてしまったのだ。一方的に襲われたリリアンに非はないが、どうしても罪悪感に胸が痛んでしまう。
「けれど——その優しさが、ギルバート様を不幸にしている」
続けて述べられた言葉に、リリアンは驚きとショックの合わさった表情を浮かべてロニーを見上げた。
彼はフッと小さな溜息を吐くと、ようやく出血の治まった口もとからハンカチを離して言った。
「予想外でした。ギルバート様がここまで盲目的にあなたに入れ込むことは。初めは私も臣下らも、あなたの存在が国王という重責を抱えたギルバート様にとって安らぎを与えるものになると信じていました。けれど……あなたの存在は大き過ぎた」
ズキンと、胸が痛む。それはリリアンも分かっていたことだからだ。まさに今も、自分がギルバートの結婚の足かせになっているのではないかと頭を悩ませていた。
改めて他人から指摘されると強く実感が湧き、なおさらいたたまれなくなってしまう。
「ギルバート様がリリアン様に夢中になるあまり政務に影響を及ぼしていることには、まだ表立って悪く言うものはいません。けれど、時間の問題でしょう。せっかく熾烈な権力争いに勝ち王宮を味方で埋め尽くしたというのに、ギルバート様ご自身がまた新たな敵を作ろうとしている。……このままでは、ギルバート様に平穏は一生訪れない」
淡々と語っているようで、ロニーの口調にはだんだんと感情が籠ってくる。決して明るいとは言えない、苦悩を窺わせる感情が。
けれど、ギルバートを想い苦しんでいるのは、リリアンとて同じだ。
「じゃあ私は……どうしたらいいの?」
悲嘆にくれながらも、苛立ちが湧き上がる。どうすることがふたりにとって、この国にとって正しいことなのか。知っているなら教えて欲しい。