王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

ロニーはリリアンに恋情を抱いてはいない。けれど彼にとってリリアンは冷酷な扱いをしていい女性でもないのだ。ギルバートと同じように王宮を離れた一年間、同じ屋根の下で共に暮らし平和で明るい時間を過ごしたことは、ロニーの心にも温かな爪痕を残したのだから。

そんなリリアンに乱暴まがいな行為をするということは、ロニーも相当追い詰められていたのだろう。

「ねえ、ロニー。聞いて」

気がつくとリリアンはハンカチを持った彼の手を両手で包むように握りしめていた。

「ギルが私に夢中になりすぎていること、私も分かってる。けど、だからこそ私はギルの傍にいたいと思うの。国王である彼を誰も咎められなくても、私なら出来る。私が叱るわ、ギルのわがままを」

強く宣言しながら、リリアンは自分の決心が固まっていくのを感じた。

本当はギルバートに他の女性との結婚など勧めたくはない。けれど、もうそんな甘えたことは言っていられない。彼の周囲の人たちを、ロニーを、こんなに苦しめている現状を打破しなくてはいけないと、強く思った。

リリアンに手を握られたまま、ロニーは少しだけためらいを見せて口を開く。

「……それは、時に残酷なことですよ。さっきリリアン様がおっしゃった『自分で自分の幸せを望むこと』と反する結果にもなります」

それはつまり、ギルバートの結婚話のことを言っているのだと思った。リリアンは一瞬唇を噛みしめたけど、すぐに明るい表情を取り戻すと首を横に振って見せた。

「間違ってない。だって私は、ギルが立派な王様になって国民に慕われることを嬉しく思うもの。ギルがたくさんの人に愛されて笑顔になれば、私は最高に幸せだわ」

その光景を思い浮かべ、リリアンは自分の気持ちが嘘じゃないと確信する。

ギルバートが心の傷を癒し、国民にも臣下にも愛され、本当の笑顔のまま王座にいられること。それがリリアンにとって何よりの望みだ。
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