王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「私、ギルのためだったらなんでもするわ」

もう一度力強く言うと、ロニーはふっと柔らかく微笑んだ。その笑みは、今まで見た彼の表情の中で一番優しい。

「本当に……強く、お美しくお育ちになられましたね。やはりあの方と同じ、誇り高きセイアッド人の血が流れていらっしゃる」

「セイアッド人?」

なぜ急にセイアッド国の名が出てきたのか、不思議に思いリリアンは小首を傾げた。確かに祖父であるジェフリーはセイアッド人なのでリリアンも血は受け継いでいるが、それが今、なんの関係があるのだろうか。

けれど聞き返した言葉に答えは返ってこなかった。ロニーは握られていた手をゆっくりほどくと、一歩後ろに下がって深々と頭を下げてきた。

「改めまして、度重なるご無礼を働きましたこと深くお詫び申し上げます。償いはリリアン様の納得される形で必ず致します。腕や足の一本も失ったって構いません。ただ、無礼を重ねることを承知で申し上げるなら——どうか私がこれからもギルバート様に仕え続けることを、お許しください」

かしこまった謝罪を受けてしまい、リリアンは慌てて両手を突き出して振った。

「や、やめて! 腕の一本も足の一本もいらないし、私が宰相であるロニーを罷免することなんて出来る訳がないじゃない!」

キスされたことは確かにショックだし許しがたいが、ロニーに重い罰を与えることなど望んでいない。そんなことを命じるぐらいなら、もっとギルバートのためにもロニーのためにもなることを命じたい。
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