王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
結局、チエール王国への外交にはリリアンも同行することになった。
けれど、リリアンは何度もギルバートと話し合いをし、リリアンは王都へは行かないという取り決めをした。
「私は港町で待っているわ。だからギルはきちんと自分の務めを果たしてくること、いいわね。もしギルが途中で外交を投げ出したり、相手に失礼なことをしたり、大臣達を困らせることをしたって報告を受けたら、すぐ船に乗って帰っちゃうからね。分かった?」
頑として譲らないリリアンの条件に、ギルバートもしぶしぶ頷かざるを得なかった。
「リリーがそこまで言うなら、ちゃんとやってくるよ。その代わり、帰ってきたときには何かご褒美が欲しいな」
「ご褒美?」
「うん。とっておきの」
青い目に妖しい光が浮かぶのを、リリアンは見逃さなかった。お見合いに向かう相手にこんな約束はいいのだろうかと戸惑う気持ちはあるけれど、胸が甘くときめくのを止められない。
「……分かったわ。外交の間中、百点満点の王様でいられたなら……キス、してあげるから」
ギルバートの頬が紅潮し、花が綻ぶような満面の笑みが広がる。リリアンも、自分の頬が熱くなっているのを感じた。
「やったね。嫌で仕方なかった外交だけど、リリーのおかげですごく楽しみになってきた」
子供のように喜ぶギルバートを見ながら、リリアンは無意識に自分の唇を指で撫ぜる。
——他の男にされたキスの名残を、早くギルバートのキスで塗り替えたい。
心に沸いてくるそんな欲望に、無理やりふたをして見ないふりをしながら。