王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

ギルバートを支え続けたいという思いはある。けれど彼が妻と愛し合うすぐそばで暮らし続けるのはつらい。それに将来彼の妻になる女性だって、夫が長年の愛人を囲っていたら良い気分はしないだろう。

自分も傷つき他人も傷つけ続ける。そんな未来を思えばリリアンが溜息を吐くのも仕方がなかった。

そのとき、部屋の扉がノックされファニーが晩餐の準備が整ったことを告げに来た。

今日は夜会も来客への晩餐会もない。ギルバートとふたりきりの食事だ。リリアンはそれを嬉しく思うものの、やはり未来のことを考えるとどうしても溜息が出てしまうのを止めることは出来なかった。



「……人参、嫌いなんだ。食べたくない」

塩ゆでしたニンジンをフォークにさしてギルバートの口元に運んだリリアンは、彼が不機嫌そうに零した言葉に、きょとんとしてしまった。

相変わらずギルバートはリリアンに食事を食べさせてもらっている。それだけで彼は常にご機嫌でなんでも平らげるのだけれど、今日は違っていた。リリアンが差し出したものを拒否するのは初めてだ。

「ギル、人参嫌いだったっけ?」

記憶を辿ってみるが、一緒に暮らしていた頃の彼は人参を食べていた気がする。それに、確かに好き嫌いは多かったがリリアンが食べなさいと叱れば、嫌々ながらも素直に食べていた。

「嫌いになった。だから食べたくない」

あまりに頑なで子供っぽい言い草に、リリアンは呆れてしまう。これが十九歳の国王の態度だろうか。
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