王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「——そこでお城のお姫様は……、ってギル? 何してるの?」
ある日、ソファーで隣り合ってギルバートに童話を読んであげていたリリアンは、ふと彼の手が自分の髪を後ろから撫でていることに気づいて顔を上げた。
「ん? 気にしないで。リリーの髪、さわってると気持ちいいから撫でてたいんだ」
無邪気な笑顔で言うギルバートに、なんだか胸がドキドキしてしまう。
以前だったら、そんな甘えたことを言う彼を可愛いと思っただろう。けれどなんだか今は気持ちがソワソワしてしまって仕方ない。
すっかり顔が熱くなってしまって、本をどこまで読んだのか分からなくなってしまった。慌てて文字を目で追って続きを読もうと焦っていると。
「……リリーは髪も身体も、柔らかいね」
隣のギルバートが甘えるようにきゅっと抱きついてきた。
リリアンの加速していた心臓が、大きな音をたてて飛び出しそうになる。
「ギ、ギル……! 今は読書中よ……!」
なぜだか、あのキスのときに見せた別人のようなギルバートの姿が頭に浮かんで、身体が緊張してしまう。いつものようにお姉さんぶって彼を窘めることが出来ない。
「少しだけ、くっついていたい」
まるでリリアンの動揺を呼んでいるように、ギルバートは抱きしめる手をゆるめなかった。それどころか背中と腰に手を回し、器用にリリアンの上半身を自分の方に向けてしまう。
そうして向かい合った形になって、ギルバートはしっかりとリリアンの身体を腕に抱きしめた。