王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


翌日。王宮の庭にはさっそくリリアンが望んだ通りの小さな畑が用意された。

王宮の庭は広大だが、その中でも日当たりがよく水路がすぐそばにある場所をギルバートは選んでくれた。近くには厩と水車小屋もあり、のどかな雰囲気がなんだかモーガン邸のある農村を思い出させる。

畑はすでに耕され土も柔らかくしてあったので、あとは種をまくだけだ。久々にエプロンドレスを着たリリアンはファニーにも手伝ってもらいながら、土をたっぷりと水で湿らせほどよい間隔で種をまき上から薄く土をかぶせた。

「これでよし、と。あとは発芽するまで水を絶やさないようにして、こまめに雑草を抜かなきゃね」

子供の頃はよく近くの農場で野菜作りを見せてもらった。優しい農夫らは小さな領主さまを歓迎して、土を弄らせてくれたり、取れたての野菜や果実をたくさんくれたりした。あの頃興味本位で見ていたことが、今こんな風に役立つなんて思いもしなかったと、リリアンは小さく笑う。

ようやくひと段落して額の汗をぬぐったとき、「どうだ、畑は。上手くいきそうか?」と声をかけられた。振り向いてみるとそこには侍従に付き添われたジェフリーがいた。

「お爺様、見に来てくださったの?」

「何やらお前が珍しいことをしていると聞いたものでな。自分の手で野菜を育てようだなんて、どういう風の吹き回しだ」

ジェフリーは侍従の手を借りて、近くに備えられているテーブルセットの椅子へと腰を下ろした。リリアンも泥だらけの手袋を外しながら向かいの席に座る。
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