王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です



それから、リリアンの毎日はせわしなくなった。

ギルバートの身の回りの世話をするかたわら、小さいながらも畑のようすを見ては野菜の手入れをするようになったのだから。

リリアンがあまりに張り切って野菜を育てているので、ギルバートもしょっちゅう畑を訪れるようになった。

あげくにはリリアンと共に雑草取りをしたり水やりを始めて、侍従らに驚かれる始末だ。けれど、政務の合間に太陽を浴びながら土を弄るのはいい息抜きになるらしい。ギルバートの顔色が以前よりよくなっているような気がする。

雨で流されてしまった人参の種を植え直し発芽したときなど、ふたりして手を打ちあって喜んだ。すくすくと育っていく野菜を見ていると、リリアンはなんだかギルバートとの愛情や信頼が育っている気持ちになってくる。

最初は人参を食べることを無理強いしているのではないかと心配もしたけれど、ふさふさと茂った黄緑の葉を見ながらギルバートが「美味しそうだなあ。はやく食べたい」と目をキラキラさせているのを見て、リリアンは安心した。

そして季節が夏を迎える頃、人参をはじめ手塩にかけた野菜たちはついに収穫の時期を迎えた。



その日、リリアンは朝から張り切って厨房に立った。皮肉というか幸いというか、没落していた二年間、食事作りも担っていたせいで料理はそこそこ作れる。リリアンはシェフの手も侍女の手も借りず、ギルバートのための料理をすべてひとりで手掛けた。

人参は約束通りケーキにした。オレンジ色に焼けたスポンジからは甘い香りが漂って、見るからに美味しそうだ。それと一緒に穫れたキャベツとジャガイモはスープにした。こちらも穫れたてなので美味しそうだ。
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