王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「わぁ、お上手ですね。どれも美味しそう」

手を出すなと言われていたのでそばで見守っていたファニーが、皿に乗せた料理を見て賛辞を贈る。その声は正直な感嘆が籠っていたので、リリアンは思わず得意満面に微笑んだ。

「なかなかのものでしょう。きっとギルも喜んでくれるわ」

「国王陛下はお幸せですね。お慕いされている女性から、こんなに愛情を掛けて頂いて」

ファニーの言葉は、ジンとリリアンの心に染みた。

なんの地位もなく権力も持たない自分でも、ギルバートを幸福にしてあげられる。そのことがたまらなく嬉しかった。

「……国王に向かってこんなことを思うのは変かも知れないけど、私、ギルを幸せにしてあげたいの。彼が心穏やかに過ごせて、本当の笑顔で暮らせる日々を作ってあげたい。つらかった過去にもう囚われないよう、守ってあげたいと思うの。だから、この料理がその一歩になるといいなって思うわ」

頬を染め想いを吐露すると、ファニーは目にうっすらと涙を浮かべてこっくりと頷いた。

「なりますよ、絶対。ギルバート陛下はこの国一番の幸福ものです」

感涙しているファニーの姿に、リリアンの胸もなんだか熱くなる。嬉しくなって照れた笑いを浮かべたリリアンは、用意されていたワゴンに料理を乗せた。

「さ、ギルがお待ちかねだわ。早く運びましょう」

手渡されたドームカバーを料理にかぶせ、リリアンは自らの手でワゴンを押しギルバートの待つバルコニーへと向かう。せっかくなので畑の見えるバルコニーのテーブルで食事しようという計らいだ。
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