王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「待ってたよ、リリー。すごく楽しみにしてたんだ」
バルコニーで待っていたギルバートは、リリアンが入って来たのを見て目を輝かせる。後ろに控えているロニーも、和やかな表情を浮かべた。
「お待たせ。全部私が作ったのよ、誰の手も一切借りなかったわ。だから、安心して思う存分食べて」
金淵のついた真っ白いクロスの敷かれたテーブルに、リリアンは料理の皿を置きドームカバーを開く。見た目も鮮やかなケーキに、温かい湯気をたてるスープを見て、ギルバートの顔がますます喜びに綻んだ。
切り分けたケーキを皿に取りギルバートの前に置いたとき、ギルバートが優しく手を掴んできた。
「ありがとう、リリー。やっぱりきみは僕の天国だ」
真剣みを帯びた青い瞳で見つめられ、リリアンの胸がドキリと跳ねる。
「——この食事が終わったら、きみに告げたいことがある」
「告げたいこと……?」
意味深な言葉に小首を傾げたけれど、ギルバートはぱっと笑顔になると掴んでいたリリアンの手に銀のフォークを握らせ「話はあとで。さ、はやく食べさせてよ」といつものように甘える。
急にいつもの調子に戻り、リリアンは脱力して苦笑してしまう。
ロニーがギルバートの席の隣にリリアンの椅子を運んでくれたので、そこに座ってさっそくケーキをフォークに刺した。
「はい、召し上がれ」
鮮やかなオレンジ色のスポンジを、いつものようにギルバートの口へ運ぶ。ひと口大の大きさにカットされたそれを、ぱくりと口の中に収めたギルバートは嬉しそうに目を細め、そして。
『うん、美味しい』と言いかけた口から血を流し、そのまま椅子から床へ崩れ落ちた。