王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

しかしロニーは地下から上がらず、そのまま通路の奥へ進むとつきあたりの鉄扉を開けて地下水路へと降りていった。

「あとで説明いたしますが、事情があってギルバート様は自室にはおられません。今は離宮に身を隠しております」

冷え冷えとした水がすぐ隣を流れる狭い通路を、ランタンの灯りを頼りに歩きながら、ロニーはそう言った。

ギルバートは無事だったとはいえ、やはり不穏なことに巻き込まれているのは間違いないようだ。そして、リリアンを牢から連れ出してくれたということは、本当の犯人に目星がついているのだろう。

毒殺を企てる残忍な犯人に恐ろしさも感じるものの、リリアンはそれ以上に怒りを抑え切れない。

ギルバートを殺害しようとし、あまつさえその罪を彼が一番信頼しているリリアンに被せようとしたのだ。ギルバートの生命と心を壊そうとした犯人を、絶対に許すことは出来ない。

リリアンは怒りに震えるこぶしをぎゅっと握りしめ、長く続く地下水路の道を、ロニーの背を追いかけて歩いた。



十五分ほど歩いただろうか。いくつかの鉄の扉を過ぎたあと、ロニーが辺りを窺ってからひとつの扉の前で足を停めた。そしてそこから建物内と思われる地下道に入り、リリアンに「気をつけてください」と促して古びたはしごを登る。

はしごを登りきって出た場所は、どうやら厨房のようだった。部屋に灯りはなくロニーの持つランタンだけが頼りなのでよく見えないが、広さはあるものの人が使っている形跡はない。王宮の厨房のように食材の入った木箱や籠も見当たらなければ、片付けてあるのか調理器具も見当たらなかった。
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