王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ギル……! ギル……!」
力いっぱいギルバートの身体を抱きしめ、その存在が夢じゃないことを確かめるように名を呼び続ける。他に言葉が出て来ない。リリアンは溢れる涙をそのままに、ただギルバートを抱きしめた。
「良かった……本当に生きてて良かった……」
嗚咽を零すリリアンの身体をギルバートも力強く抱きしめ、気持ちを安らげるように優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫だよ、リリー。僕は易々と死んだりしない。きみを手に入れられないまま死ねるもんか」
彼らしくも、頼もしい言葉だった。けれど、その声にはいつものなめらかさがなく、ひどくしゃがれている。
心配になってリリアンが顔を上げ見つめると、ギルバートは彼女の涙を手でぬぐってあげてから、そっと身体を離した。そしてテーブルに燭台を映すと、共にソファーに座るよう促す。
話をするのだろうと察したリリアンは素直に従いギルバートの隣に腰掛けた。ロニーも、向かい側の椅子に腰を下ろす。
「ええと、どこから話そうかな……」
考えるそぶりを見せたギルバートに、リリアンはたまらず「身体は大丈夫なの?」と尋ねた。色々聞きたいことはあるが、まずはそれが心配だ。
仄かな蝋燭明かりに照らされながら、ギルバートはわずかに微笑み頷いて見せる。
「五年前に殺されかかってから、毒への耐性をつける訓練をしてきたからね。それにロニーが解毒剤を常に常備してる。おかげで命に別状はなかったけど、喉が少し爛れたみたいだ。そのうち治るだろうけど」
今でも緩むことのない警戒心が、今回の窮地を救ったのだ。結果としては良かったけれど、やはり彼は未だに王宮で気を抜くことを許されないのかと悲しくもなる。
掠れがちな声が可哀想で、リリアンは慰めるようにギルバートの唇にチュッとキスを落とした。
「早く治るように、おまじない」