王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
心配そうに見つめるリリアンに、ギルバートの瞳が切なく揺らぐ。
「……どんな薬より効きそうだ。ありがとう、リリー」
このまま抱きしめて深いキスを返したい衝動を抑えて、ギルバートはフッと息を短く吐いてから話の続きを再開する。
「リリーには心配をかけたうえ牢になんて入れられて、つらい思いをさせてしまったね。守ってやれなくて本当にごめん」
守るも何も、あのとき倒れていたギルバートに出来ることはなかったのだから彼が謝る必要はない。リリアンがそう言おうとしたとき、ロニーが言葉の続きを引き取った。
「ギルバート様もわたくしも、当然ですが最初からリリアン様が犯人だとは思っていません。けれど、敵が誰かを見極めるまではあなたを投獄しない訳にはいかなかった。ご無礼をお許しください」
ということは、敵が誰でその企みの真意が読めたからリリアンは救出されたのだろうか。いったいどこの誰が、どんな恨みがあってこんなひどいことをしたのか。気になってリリアンは思わず前のめりに尋ねた。
「誰なの。こんな……こんな許せないことをしたのは」
しかしギルバートとロニーはすぐに口を開かず、互いに目配せをし合ってためらいを見せた。
「……私の……知ってる人なの?」
そう問いかけて、リリアンはハッとする。
誰の手も借りずに作ったはずのケーキ。けれど、もし一瞬の隙をついて毒を仕込めることが出来るとしたら、あのときそばにいた誰かに違いない。
そして、その中でリリアンのよく知った人物といえば——。
「……ファニー、ね……?」
喉が引きつるような思いでおそるおそる尋ねれば、ギルバートとロニーは黙って小さく頷いた。