王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

にわかには信じられない。ファニーはリリアンが王宮に来た日からとてもよく尽くしてくれた。何かと気遣ってくれただけではなく、色んなお喋りだってした。

歳の近い者と交流がなかったリリアンにとって、ファニーはまるで友達のようでもあった。それこそ、ケーキを持っていくときにはリリアンの話に感動の涙を流しギルバートとの恋を応援してくれたではないか。

それがなぜ、こんな愚行を犯したのか。リリアンにはその理由が見当もつかない。

「毒はケーキに被せてあったドームカバーから検出されました。ふたを閉めるとケーキに落ちるように数滴垂らしてあったのでしょう」

ロニーの説明を聞いて、リリアンは虚を突かれた思いだった。確かに料理は誰にもさわらせなかったし、食器もカトラリーもすべて布で磨いてからワゴンに乗せた。けれど、さすがにドームカバーの内側までは見ていなかった。そういえば、思い返してみると最後にドームカバーを手渡してくれたのはファニーだった気がする。

「それが出来たのは厨房にいた者だけ。我々はすぐさま容疑者全員の素性を調べさせました。その中でひとりだけ、経歴のおかしかった者がいたのです」

「それが……ファニーだったのね」

再びロニーは静かに頷いた。

「ファニーは市井の出身です。とある教会の娘で、信頼の厚い牧師の紹介で昨年から城へ奉公に来ていました。特に変わったところはなく今までも女官の侍女として働いていたのですが——、身上書を確認したところおかしな点が発見されました。年齢が十四歳とあったのです」

十四歳。それは些細ではあるが、確かに引っ掛かる点であった。ファニーは幼げな顔立ちはしているが、そこまで若くはない。年齢というものは、特に十代から二十代にかけては体格や肌質などが大きく違ってくるものだ。

ファニーの体つきはすでに成長を終えた大人の女性のものだ。成長期特有の不安定な華奢さや肉付きは感じられない。特に手の甲はそれが如実で、彼女の手は弾けるような張りの幼いものではなく、しっとりと落ち着いた大人の女性らしい感触だった。

おそらく、二十前後ぐらいだろう。十四歳というのはたしかに違和感がある。
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