王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ファニーが犯人であることは疑いようもないけど、客観的な証拠がない。メーク島への手紙も直接シルヴィアらに送っていたんじゃなく、他の者を経由させていたみたいだからね。彼女が真犯人だということを示すには、確固たる証拠が必要だ」
今度はギルバートが話の続きを引き取って言った。
今の段階ではまだファニーの身柄を拘束することは出来ない。治安判事をも納得させることが出来なければ、逆にリリアンへの疑いが強くなってしまうだろう。
ましてやそんな状態でギルバートがリリアンの無実を主張したら、臣下どころか国中の民が、国王は毒殺犯にたぶらかされ気がふれたなどと俗言されかねない。ふたりの立場をますます危うくするだけだ。
「ファニーの父に娘が本物かどうか確認を取らせるのが確実なのですが……、父親は王都から離れた教会にいるので、連れてくるには時間が掛かり過ぎるのが難点です。あまりモタモタしているとファニーにこちらの動向を怪しまれ、逃亡されかねません。おまけに彼女が単独犯なのか、他に協力者がいるのかもまだ不明です。うかつにこちらが動くと、情報が漏れる恐れがあります」
悩ましげに話すロニーの言葉に、リリアンまで考え込んでしまう。
せっかく犯人が分かったというのに、簡単には捕えられないことが悔しい。何かいい方法はないのかと気持ちばかりが逸る。
「どうすればいいのかしら……」
焦燥を滲ませスカートを握りしめるリリアンに、ギルバートは密かに顔に苦悩を浮かべてから、すぐに表情を引きしめ真剣な声色で言った。
「——策はある」
リリアンは知らない。彼がそれを考え決断するまでに長い葛藤があったことを。
「敵を罠にかける。そのためには——きみの協力が必要だ、リリー」
「わ、私の……?」
目を丸くして驚いているリリアンの手を両手で包むように握り、ギルバートは祈るように、誓うように言った。
「大丈夫。リリーを危険な目には合わさない。僕が必ず守る」