王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
この作戦に、ギルバートは本当はリリアンを巻き込みたくなかった。けれど、時間の猶予もなく他に手段がない以上、決断せざるも得なかったのだ。
もしファニーがギルバートの命を狙っただけならば、彼はリリアンを巻き込むぐらいなら事件の真相を追うことをやめただろう。けれど今回は真実を暴かなくてはリリアンの名誉を回復することが出来ないのだ。追及の手を止める訳にはいかない。
ギルバートの中にそんな苦渋の決断があったことを、リリアンは渡された鎖帷子と厚い生地の外套を見て感じ取った。
「外套の裏地はブライトルレザーでナイフ程度の刃なら通しません。小型の剣でも垂直に刺されなければ帷子が防ぐはずです」
翌日の夜、三人は離宮の部屋でファニーを罠にかけるための準備を始めた。
簡素なドレスの上に慣れない鎖帷子を装着しながら、リリアンは話を進める。
「ファニーとの待ち合わせは深夜零時、王宮の裏口で間違いないわね?」
「はい。その時間帯、裏口の衛兵には巡回を命じてあります。その隙を狙ってファニーと落ち合い、城内に侵入してください」
ふむふむと頷いてリリアンは計画を頭に叩き込む。ギルバートはそんな彼女を見て、やはり不安そうに眉尻を下げた。
「無理はしちゃ駄目だよ。ファニーに不穏な動きがあればすぐに逃げてロニーを呼ぶんだ。いいね?」
「ギルってば、そんな弱気でどうするのよ。大丈夫、まかせて。必ずファニーを寝室までおびき寄せて見せるから」
この作戦が怖くないと言ったら嘘になる。けれどリリアンはそれ以上に使命感に燃えていた。必ずファニーの凶行の真実を掴んでみせる、と。