王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
ギルバートとロニーがたてた作戦はこうだ。
王宮にはすでにふたつの報告を流してある。ひとつはギルバートが一命を取り留めたこと、もうひとつはリリアンが地下牢から脱走したことだ。
それを耳にしたファニーはおそらくもう一度ギルバートの殺害を図るだろう。けれど彼女がいつどんな手を使うかは分からない。だからチャンスを与えてやるのだ。
『助けて、ファニー。ギルに会いたいの。協力して』。リリアンの筆跡でそう綴った手紙を、ファニーが使っている部屋の窓へと投げ込んでおいた。罪を着せられ牢獄を脱走したリリアンが愛するギルバートに会いたくて、ファニーに協力を求めていると思わせるように。
おそらく彼女はこれをチャンスと捉えるはずだ。今度こそギルバートにとどめを刺し、その罪をリリアンに着せることが出来るのだから。
呼び出しに乗ったファニーはリリアンをこっそり城内に招き入れ、ギルバートの寝室まで連れて行くだろう。そして必ずそこで、ギルバートを再び手に掛けようとするはずだ。
「証拠を掴めないなら、現行犯を捕えるしかありません。ファニーが凶行に走った瞬間を、私とギルバート様で取り押さえます」
ロニーはそう説明した。
ギルバートはあらかじめ寝室に隠れ、ロニーはリリアンを見守りながらひそかに後方からついていく予定だ。
上手くいけば彼の言う通りファニーを現行犯で拘束できる。しかし、リリアンに危険が伴うことだけは避けようがない。ファニーの凶刃がギルバートだけでなく、リリアンに向けられる可能性もあるのだから。
「大丈夫よ、ギル。神様は正しい者の味方よ。作戦は必ず上手くいくわ」
自分の勇気を奮い立たせる意味も込めて、リリアンは強く言い含める。
けれどギルバートは複雑そうな感情に青い瞳を曇らせると、小さく嘆くように言った。