王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ギ、ギル……。そのままでいいから聞いて」
リリアンはベッドの前に立つと、そこにいるかも分からないギルバートに向かって話しかけた。
「あなたに毒を食べさせたのは私じゃないわ。どうか信じて欲しいの。私はギルを傷つけることなんか絶対にしない。きっと真犯人を見つけてみせるから、だから……どうか、信じて」
それだけ言うと、リリアンは息を吐きだし一歩後ろへ下がった。
と、同時に後ろへ控えていたファニーが一歩前に進みリリアンの隣に立つ。
「リリアン様は本当にギルバート陛下のことが大切なのですね」
すぐ隣でかけられた感激に咽ぶような声は、あの日、厨房で聞いたのと同じ声色だった。
「大丈夫ですよ。陛下はリリアン様のことを信じておられるはずです。だっておふたりは、こんなにも想い合っているのですから」
「……ファニー……」
やはり間違いだ。そう確信した。ファニーは心の底からリリアンを思い遣ってくれている。主従を超えた友情にも近い敬愛で。
申し訳ない気持ちが湧き上がり、リリアンは思わず彼女の手を両手で握りしめた。
「ありがとう、ファニー……」
「お礼なんておっしゃらないでください。だってリリアン様と陛下がお慕いし合っていることは、よく存じ上げておりますもの」
その声色はやはりいつもと変わりない優しいファニーのものだ。だからリリアンは気づくのが一瞬遅れた。
リリアンに握られたのと逆の手に、ランプの灯りを映し込んだ鈍い光が潜んでいることに。