王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「おとなしく僕だけを狙っておけば良かったものを。リリーに刃を向けた罪はこの国で最も重い。地獄で思い知れ」
本気の殺意が籠った低い声にゾッと気圧される。一瞬、息が止まるほどの恐怖を感じた。
けれど、リリアンがとっさに彼の腕にしがみつき止める。
「駄目……っ! 殺さないで!」
まだ真実は何も分かっていない。ファニーがどうしてこんな悲しい凶行に及んだのか、その理由を知らないまま葬る訳にはいかなかった。
ギルバートの憎悪に濁った瞳が、一瞬わずらわしそうに歪められる。そのとき、部屋の扉が開きロニーが駆けこんできた。部屋の前で待機していたところ、大きな物音と声が聞こえたので突入してきたのだろう。
「ギルバート様、落ち着いてください。この女を証言台に立たせるまでは殺してはなりません。リリアン様の無実が証明出来なくなってしまいます」
尋常じゃない様子の主君を見て状況を察したロニーも、すぐさまギルバートの腕を掴んで諌めた。
リリアンの無実が証明出来なくなると聞いて、ギルバートはやっと我を取り戻した。振り上げていた腕を降ろし、剣を鞘に納める。
しかし、リリアンとロニーがホッと息をついたのも束の間。
「殺しなさいよ、この悪魔!」
床に伏せて取り押さえられた姿勢のまま、ファニーが叫んだ。