王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「エリオット様の魂を蝕んだ残酷非道な悪魔のくせに! 殺しなさい、未来永劫呪ってあげるから!」
ついに偽りの仮面のはがれたファニーは、半狂乱になって喚いた。その言葉の内容にリリアンは愕然とする。
ファニーは本当にシルヴィア達の手先だったのだと。友のような優しい言葉はすべて偽りだったのだと、容赦のない真実がリリアンを襲う。
「ファニー……、どうして……」
喉の奥から絞り出すような苦しい嘆きが、リリアンの口から零れる。
権力を巡って繰り返される愚かな争い。大勢の人を巻き込んで、この嘆かわしい受難劇は一体いつまで続くのだろうか。
「もうどうあがいたってエリオットは国王にはなれないのよ。今さらこんな復讐をしたって、誰も幸せになんてなれないじゃない。こんな馬鹿げた争いから、もうギルを解放してあげて……!」
やるせない悲しみに、リリアンは願うように言った。
しかし、ファニーから返ってきた言葉は驚くべきものだった。
「そんなこと……、そんなことエリオット様は望んでない! あの方はただ平和に暮らしたかったのよ、王位なんて望んでなかった! 国王の座に執着してエリオット様を酷い目に遭わせたのはお前達じゃない!」
その科白に、リリアンばかりかギルバートロニーも驚嘆の面持ちになる。
王位を望んでいない——だったらファニーの復讐はいったい何が目的なのか。
けれど、ファニーの瞳に浮かんだ涙を見てリリアンは気づく。悔しそうに、苦しそうに歪められた瞳から零れた涙に、籠められた想いを。