王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「ファニー……。あなた、もしかして……エリオットの恋人なの……?」

リリアンの推測は、ギルバートたちをさらに驚かせた。

そして、その推測が的中したことを示すように、ファニーの瞳からは一気にボロボロと涙が溢れ出した。

「……ずるい……。どうして同じ立場なのに、あなたたちだけが幸せなの……? 私だってエリオット様と笑い合って暮らしたかった。 あの方の笑顔を奪っておきながら、何も知らずに笑い合っているあなたたちが許せない……! 私にも幸福を、エリオット様の笑顔を返してよ!」

泣き叫んだファニーの姿に、リリアンは胸が引き裂かれるような想いがした。

こんな結末、誰が予想できただろうか。ギルバートとエリオット。運命の悪戯で生まれたふたりの王子と、それぞれを愛する女。

ファニーは鏡に映った自分だとリリアンは思った。王宮の陰謀に巻き込まれた勝者と敗者。それを境にして映し合っている、同じ立場なのだと。

リリアンはギルバートに取り押さえられていたファニーの身体を解放し、床に座らせてあげた。もう逃げる気配もないようなので、ギルバートたちも強く拘束することはしない。

ファニーは観念したように告げた。自分はメイベルという名で、エリオットの乳母兄妹でこの王宮で彼と仲睦まじく平和に育ったことを。

けれど七年前、シルヴィアに不義の疑惑が上がると状況は一変し、エリオットは熾烈な王位継承権争いの渦中に放り込まれる。

エリオットはメイベルと彼女の母を遠い町まで逃がすように手配した。これから王宮は陰謀と欲望の渦巻く戦場になる。大切な幼なじみを巻き込みたくないという彼の精一杯の想いだった。

遠い地でエリオットの無事を願うメイベルの祈りは届かなかった。一年前、当時王太子だったギルバートは徹底的にシルヴィア復権派を叩き潰すため、シルヴィアとエリオットを不敬罪として流刑に処したのだ。

それを知ったメイベルは己の危険も顧みずすぐにメーク島へと渡った。そこで彼女が見たものは——長年の権力争いに巻き込まれ精も根も尽き果てたエリオットの姿だった。
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