王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ギルの馬鹿! 馬鹿、馬鹿ぁっ! いっつも私に内緒ばっかりで、勝手に決めちゃって、振り回してばっかりで! ギルなんて嫌いよ!」
昔からそうなのだ。いつだって何も知らないのはリリアンひとりで。風のように現れて、幸福な思い出だけを残し突然消えてしまったときも、いきなり国王になった彼と再会したときも。リリアンばかりが振り回されて、驚かされて、泣かされて……。
けれど。
「養子縁組のことは勝手に進めちゃって悪かったと思ってる。でも、約束したよね? 僕もリリーもずっと一番好きでい続けるって。その約束を形にしただけだよ。僕にとってはリリーと結婚することは七年前のあの日から決まっていた、当たり前のことなんだ。リリーは違うの?」
怒って背を向けたリリアンの身体を、ギルバートが後ろからそっと抱きしめてきた。
いつのまにかリリアンよりずっと大きくなっていた身長。大人の男らしい大きくて頼もしい手。たくましい胸と腕。あの小さかった少年がこんなに大きく育つほどの長い年月、ギルバートはずっと信じていた。リリアンと必ず結ばれることを。
「だって……だって、私だってギルとずっと結婚したかった……! でも出来ないと思ってたから……すごく悩んで……」
「出来ない訳ないのに。僕はリリーを手に入れるためなら、なんでもするんだから。けど、今度からはきみが悩んだりしないようにちゃんと話すよ。だってリリーは僕の伴侶になるんだからね」
いつのまにか滲んできてしまった涙を、ギルバートが後ろから手を伸ばして優しくぬぐう。
「大人になったらリリーの方が泣き虫になっちゃったね」
そんな大人びた台詞をかけられるほど、彼は子供ではなくなっていた。そのことが胸を甘くときめかせ、けれどなんだか少し切ない。