王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

ローウェル家の養女になったとて、リリアンは寂しいとは思わない。王妃になるリリアンは当然王宮に住むのだし、王宮特別宮内官に任命されたジェフリーも王宮に住むことになったのだから。もちろん、ローウェル夫妻もだ。リリアンにとっては家族が増えたという認識に他ならない。

思い出がたくさん詰まった生家であるモーガン邸への帰郷も、時々ならば許してもらえるだろう。憂うことは何ひとつなかった。

「お爺様ったら。それじゃあなんだか私が寂しがり屋の甘えん坊みたいじゃない」

畑の水やりを終えたリリアンがティーテーブルにつくと、ジェフリーは紅茶を嗜みながら「おや、違うのか?」などと笑う。

「私はしっかりしてるわ。甘えん坊のギルとは違うんだから」

思わずムキになって反論してしまえば、後ろから噂の甘えん坊の声が聞こえた。

「あはは、リリーってばお姉さんぶっちゃって。じゃあご期待に応えて、今日もたっぷり甘えさせてもらおうかな」

「ギ、ギル……! 来てたの!?」

まさか張本人が背後にいたとは気づかず、リリアンは驚いてあやうくティーポットを倒しそうになる。

青いジュストコール姿のギルバートは今日もニコニコとご機嫌だ。彼はリリアンさえいれば、常に笑顔を絶やさない。

そしてその後ろには、甘え癖のある主君に困りながらも穏やかな笑みを浮かべるロニーの姿も。

その笑顔にはギルバートがようやく国王としての責任を強く持ち、新王政が安泰してきたことに対する心からの安堵が窺えた。
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