王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ギルったら、地方の視察に行ってたんじゃなかったの?」
「視察も接見も終わらせてきたよ。予定より早く帰れたから、お茶の時間を繰り上げようと思ってね」
会話しながらリリアンの隣の椅子にギルバートが座ると、侍女がすぐさまお茶の準備を始める。
「ねえ、カボチャはいつ収穫出来るの? 僕、リリアンの作ったパンプキンパイが食べたいよ」
リリアンはあれからも小さな畑を続けている。野菜を育てるのは楽しいし、何よりそれで作った菓子や料理をギルバートが美味しいと喜んでくれるのが嬉しかったからだ。
王妃になる身としてはあまりに庶民的な趣味だけど、国王自身がそれを楽しんでくれているので、結婚後も続けさせてもらえるだろう。
「カボチャはまだ先よ。それより先にカブが穫れるからスープを……ん?」
会話をしていると、ジェフリーや侍従、ドーラ夫人らが静かに礼をして皆立ち去って行った。ロニーまでもが「陛下。一時間後にお戻りになられますように」と言い残して去って行く。
すでにギルバートがリリアンに尋常じゃない甘え方をすることは、宮殿中の知ったところだ。気を利かせている——、というよりは、そんなふたりのイチャつきに当てられてはたまらないとばかりに、皆そそくさと席を外した。
「え? どうしたの、みんな。一緒にお茶をすればいいのに」
ひとり意味の分かっていないリリアンはすっかり誰もいなくなってしまった周囲をキョロキョロと見回すが、ギルバートは待ってましたとばかりに身体をすり寄せてくる。
「やっとふたりっきりになれたね、リリー」
言うが早いか、いきなりほっぺにキスを落とされて、リリアンは動転した。いくら皆が立ち去ったとはいえ、ここは中庭だ。どこで誰が見てるとも限らないのに。