王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「ねえ、リリー。前から思ってたんだけどさ、リリーってミルクブラマンジェに似てるよね。白くて柔らかくていい匂いがして。食べたらやっぱり甘くて美味しいのかな」
犬のようにリリアンに擦り寄りながら、ギルバートはチュ、チュッと頬にキスを綴っていく。くすぐったくて身を捩れば、逞しい腕にぎゅっと包まれてしまった。
「もう、ギルってば私をおやつ扱いするのはやめて」
「おやつじゃないよ。リリーはいつだって僕のメインディッシュだから。まあ前菜もデザートも全部リリーだけど」
よく分からない理論を口にしながら、ギルバートの唇はついにリリアンの唇に辿り着いた。
ケーキよりブラマンジェより甘い、幸福なキス。こんな場所で恥ずかしいと思いながらも、リリアンはうっとりと酔いしれる。
愛おしい幼なじみは、有能な国王陛下で、輝くような美貌の持ち主で、それなのに誰よりも甘えん坊だ。
けれどそれだけじゃない。彼は心身ともに成長しリリアンを愛し守れる強い男になった。
甘えん坊の幼なじみも、愛する強さを持った大人の彼も、どちらも好きだとリリアンは思う。だって、それがギルバート・ケネス・イーグルトンという男なのだから。
「リリーの唇、柔らかくて美味しいね。あー、はやくリリーの全部を食べちゃいたいなあ」
無邪気な口調とは裏腹にねっとりと淫靡な舌遣いで唇をねぶってくるギルバートを、リリアンは苦笑しながら押し離す。
「我慢して。結婚式まであと一年もないでしょう。もうちょっとの我慢よ」
「一年って……すごく長いよお」
いじけた子供のような声を出すギルバートの頭を、リリアンはクスクスと笑いながら優しく撫でた。
「本当にもう、仕方のない子。でも大好きよ、ギル」
吹き抜ける秋の風が、畑の植物たちをサラサラと揺らす。
黄色い花を実らせたキンレンカが秋の陽射しを受けてキラキラと揺らめき、光り輝くエデンのように煌めいていた。
終