王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「セドリック卿!」

すると、屋敷の玄関からジェフリーが杖をついて出てくるのが見えた。三年前に腰を悪くしてから、ジェフリーはひとりでは上手く歩けない。リリアンが慌てて祖父に手を貸しに行こうとすると、それより早くセドリックがジェフリーに駆け寄った。

「ジェフリー殿! ご無沙汰致しております! お迎えが遅くなってたいへん申し訳ありませんでした……!」

「いや、構わない。それより、そうか……ついに殿下、いや、陛下が……」

「はい、先日無事に戴冠式を終えました。これもジェフリー殿のおかげです」

ジェフリーとセドリックはどうやら知り合いのようだ。なにか感慨深い話をしているようだけれど、リリアンには当然分からない。

「ねえ、お爺様。いったいどういうことなの? どうして王宮から使役の方がいらしたの?」

疑問でいっぱいのリリアンが尋ねれば、すぐさまドーラが「殿方のお話に無遠慮に口を挟むものではありません」と咎める。またしても意味の分からぬ叱責を受けてしまい、リリアンは拗ねて小さく口を尖らせた。

けれどジェフリーは上機嫌でにっこりと破顔すると、リリアンに向き直って言った。

「苦労かけたな、リリアン。これでもう、何もかも大丈夫だ」

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