王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

正面アプローチ前に停まった馬車から降り、リリアンはセドリックに案内されてジェフリーと共に宮殿内に入った。

中はこれまた見事なロココ装飾で、金の装飾が眩い。驚くほど長く続く廊下には、数歩歩くごとに金で縁取られた柱と天使や聖母の彫刻が並んでいる。見上げれば天井にも延々と宗教画が描かれていて、まるで美術館のような廊下だ。

足元はモザイク柄の大理石で出来ていて、あまりの綺麗さに踏むのをためらってしまう。リリアンは王宮の豪奢さに圧倒されながら、セドリックに遅れないよう歩みを進めた。

「こちらです」

セドリックが足を止めたのは巨大な観音開きの扉の前だった。両脇には衛兵が待機しており、物々しさを感じる。いったいこの部屋に誰がいると言うのか、改めて緊張が走った。

「先にリリアン様だけお入りになるようにとのことです」

セドリックがそう告げたのを聞いて、不安がますます大きくなってしまった。初めて王宮に来た小娘に、いったいひとりで何をやらせようというのだろう。

扉が仰々しく開かれ、セドリックとジェフリーに見守られながらゆっくりと中に進み入った。大理石の床に敷かれたベルベットのカーペット、アーチ状の巨大な窓と王家の紋章が描かれたタピストリで飾られたその部屋は、どうやら謁見の間のようだ。

そして部屋の最奥の玉座に座っているのは——。

「リリアン、久しぶりだね」

波打つブロンドと青い瞳の涼やかな目元を持った、類まれなる美丈夫の男だった。
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