王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「忘れちゃった? それとも見違えたかな。だいぶ身長も伸びたしね」
国王はリリアンの前までやって来て、ぎゅっと両手を握ってきた。
リリアンよりずっと大きい手は温かく、男らしく骨ばっているけれど柔らかい。その感触に胸がドキリと跳ねた。男の人に手を握られるなど初めてだ。
驚いて思わず顔を見上げると、近い距離で視線が絡んだ。キラキラとした水晶のような瞳を見つめて、リリアンの頭に一瞬『まさか』という記憶が走る。
まさか。そんなはずはない。だってあの子は今、十五歳ぐらいの少年のはずだ。目の前の国王はどう見たって年上の青年で、二十歳ぐらいに思える。けれど。
「……ギル……?」
ありえないと思いながらも、震える声で呼びかける。
次の瞬間、握られた手がパッと離され、かわりに勢いよく抱きつかれてしまった。
「ようやく思い出してくれたね。会いたかったよ、リリー」
「う……嘘でしょうっ!?」
自分で呼びかけておきながら、リリアンは全否定で叫んでしまった。
なぜ従僕だったギルバートが国王なのか。それよりどうして彼は年齢を超越してしまったのだろうか。疑問だらけで頭がクラクラとしてくる。やはり自分は謀られているに違いないと思った。
しかし疑いの目を向けるリリアンに、ギルバートを名乗る国王はキョトンとして小首を傾げる。
「嘘って何が? 僕は正真正銘ギルバートだよ。まあ、何も聞かされてなかったみたいだし、幼なじみが国王だなんて言われても吃驚しちゃうか」