王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
そうなのだ。何も聞かされていないことがそもそも混乱の原因なのだ。
リリアンがコクコクと頷くとギルバートは眉尻を下げてクスッと小さく笑った。
「ちょっと物騒な事情があってね。七年前、僕は命を狙われていたんだ。王宮から逃げざるを得なくて、王都から離れたきみのお爺さんに協力を煽いだ。ジェフリーは僕にとって信頼出来る筋の人だからね。そうして僕は人目を忍んで正体を隠し、状況が好転するまできみの家に厄介になってたってことさ」
なんとも大雑把な説明ではあったけれど、大体の概要はつかめた。結局、リリアンだけがその事情を知らずギルバートを本当の従僕だと思っていただけだったのだ。
半分は納得したけれど、もうひとつ大きな疑問が残っている。それはどう考えても年齢の辻褄が合わないということだ。
そのことを尋ねようとリリアンが口を開きかけたとき。
「……ん?」
何やらギルバートがリリアンに抱きついたまま妙な動きをしていることに気づいた。上半身を揺すり、まるで胸板でリリアンの胸を捏ねているような——。
「リリーすごいね。こんなに胸大きくなっちゃって、今にも零れそうだ。くっついてるだけで、変な気分になりそうだよ」
あっけらかんととんでもないことを口にしたギルバートに、リリアンはしばらく呆然としてしまった。しかしみるみるうちに顔が真っ赤に染まり、弾けるように彼の身体を突き飛ばして腕の中から抜け出す。
「へ、へ、変なこと言わないでっ! 馬鹿っ!」
相手が国王ということも忘れて、思いっきり罵ってしまった。男性と縁のない生活を送ってきたリリアンにとって、いきなり性的なことを言われるのはあまりにもショックだった。