王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
胸を両腕で覆って涙目になってるリリアンに、ギルバートは困ったように微笑みかける。
「ごめん、またキスのときみたいに泣かせちゃうところだったね」
その台詞に、リリアンは嫌でも彼が本物のギルバートであることを確信した。あのキスの出来事を知るのはふたりだけしかいない。やはり目の前の青年はギルバートで間違いないのだ。けれど。
「……ギル……。あなたって、いくつ……?」
どうしてもそれだけが納得がいかず尋ねたリリアンに、彼は驚くべきことをさらっと口にした。
「十九だけど?」
「ど、どうして!? だって、あなた——」
見た目通りの年齢を告げたギルバートにリリアンは食ってかかる。いったいどんな魔法を使ったら十五歳から十九歳まで超越してしまえるのか。
すると今度はどこかとぼけたような口ぶりで、ギルバートはもっと驚くことを告げてきた。
「薄々感じてたけど、リリーって七年前、僕のこと年下だと思ってただろう?」
「え?」
「僕、きみより年下だなんて言った覚え一度もないけど?」
衝撃の事実に、リリアンの顔がサーッと青ざめていく。
記憶の糸を必死に辿ってみれば、確かに彼は自分の年齢を口にしたことがなかった。姓も誕生日も秘密にしていた彼は、年齢すらも教えてくれなかったのだ。
けれど、リリアンは当時のギルバートの小柄さとあどけなさから勝手に年下だと思い込んでいたのだ。きっと八歳ぐらいだろうと決めつけ、いつの間にか自分の中でそれが真実になってしまっていた。
「じゃ、じゃあ……七年前、一緒に暮らしてたときって……」
「きみが十歳で、僕は十二歳だったね」
リリアンはうっかりそのまま気を失いそうになった。