王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

(十二歳!? 十二歳って!!)

八歳と十二歳ではあまりにも違う。全然違い過ぎる。

てっきりリリアンはギルバートを何も分からない子供だと思っていたのだ。だからお姉さんぶって得意げに色んなことを教えてあげたし、なんの疑問も持たず一緒に風呂にだって入っていた。

けれど十二歳といえば二次成長の始まる年頃だ。もう異性と風呂に入ったり、一緒のベッドに潜っていい年齢じゃない。

「僕、子供の頃はいい環境で育ってなくてね。だいぶ成長が遅れてたんだ。でもきみのところで暮らして、いっぱい太陽を浴びて身体を動かすようになってから急激に身長が伸び始めたんだよ。おかげで今では将校に褒められるほど立派な体格になったんだ。あとで見せてあげようか」

ギルバートの説明が耳をすり抜けていく。問題はそこではないのだ。理屈が分かったところで、昔の羞恥が消えるわけではない。

「ギ……ギルの馬鹿ぁっ!!」

異性を充分意識する年齢の少年に、自分は全裸を見せキスまで奪われてしまったのだ。無邪気な子供の思い出では許されない。

目の前の麗しくも立派な“男”である青年と、七年前の無邪気な少年、そしてキスのとき一度だけ見せた妖しい雰囲気のギルバートの姿が、頭の中をぐるぐる回る。

ギルバートのことをものすごく異性として意識してしまって、心臓が痛いほど脈打っていた。羞恥の気持ちがどんどん湧いてきて、顔が熱くてたまらない。それなのに。

「なんで怒るの? 勝手に子供扱いしてたのはリリーだろ?」

まるで彼女が動揺しているのを楽しんでいるように、ギルバートは含み笑いを浮かべて近づいてくる。そして、動転しているリリアンを再び腕の中に捕まえると。

「僕は全然かまわないけどね、リリーが僕を小さい子供扱いしても。なんなら、今日も一緒に風呂に入って、一緒にベッドに潜ろうか?」

彼女の羞恥心を最大限に煽る台詞を、耳元で吐いた。

次の瞬間。恥ずかしさと今まで真実を隠されていた怒りで頭が真っ白になってしまったリリアンは、自制心が働く前にギルバートの頬を思いっきり打ち払ってしまったのだった。

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