王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

王宮に用意された客間で、リリアンはドーラ夫人から懇々とお説教を受けていた。

「今回のことは国王陛下が寛大なお心でお許しくださったけれど、本当ならばその場で首を刎ねられてもおかしくないことです。国家君主で国の太陽たるお方を平手打ちするなどあり得ません。今夜は寝ずに反省なさい、いいですね」

「はい……」

しょんぼりと顔を俯かせながら、リリアンはかぼそい声で返事する。

さすがに相手がギルバートとはいえ国王をひっぱたいてしまったのはまずかった。そこは大いに反省する。しかし、そもそもの原因を作ったのは彼の方だ。年頃の娘が激怒するには充分な理由だったはずだ。

(何よ……、もとはと言えばみんながギルのことを何も教えてくれなかったのが悪いのに。あの頃、ギルが年頃の少年だって知ってたら、私だって無防備な姿を見せたりしなかったわ)

思わず拗ねた表情を浮かべれば、すかさずドーラ夫人が厳しい視線を浴びせてくる。リリアンは焦って顔を俯かせ、大人しく反省している風に装った。


あれからジェフリーに聞いた話によると、七年前、ギルバートが国王の子息であることはモーガン邸の者達は皆知っていたそうだ。もちろん、本当の年齢も。

けれど、まだ幼かったリリアンだけが真実を知らされなかったのには理由がある。

当時ギルバートは王位継承権を巡ってとある一派に命を狙われていたのだ。遠い田舎町まで逃亡してきたとはいえ、万が一のことを考え幼いリリアンを巻き込まないようにした配慮だったという。

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