王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


前国王ラッセルにはふたりの妻がいた。ギルバートの母であるミレーヌと後妻のシルヴィアだ。

友好国であるセイアッド国から嫁いできたミレーヌはギルバートによく似た美しく優しい妃だったという。慈悲深く凛然としていたミレーヌは、国民にも臣下にも慕われた王妃であった。

ジェフリーは元々セイアッド国出身でミレーヌ付きの侍従長であり、彼女が輿入れした際にステルデン国の領地と爵位を賜った。そしてミレーヌが王妃の間もずっと秘書官として彼女を支え続けたのだという。

しかし、難儀なことにミレーヌにはなかなか子が授からなかった。それが原因でラッセルとは段々と不仲になり、彼は別国の公爵令嬢であったシルヴィアを愛人に持つようになってしまう。

その数年後、運命の悪戯は起こった。ミレーヌとシルヴィアがほぼ同時期に子を授かったのである。

野心家のシルヴィアはどうしても我が子に王位を授けたかった。そして彼女は周到に証拠をでっちあげ、ミレーヌに不義の疑いをかけたのである。

シルヴィアにのぼせていた国王は愚かにもそれを信じ、ミレーヌを離宮へと幽閉した。

身重のミレーヌは心労がたたったことと、薄暗い離宮での軟禁生活により、みるみる痩せ衰えていった。そしてギルバートを産み落とすと、そのまま命の灯を消したのであった。

王の後妻にはすぐさまシルヴィアが迎えられ、彼女が生んだ男児エリオットこそが王位継承者として迎えられる。

そして、ギルバートはその存在を隠されるようにひっそりと離宮に幽閉され育てられた。
< 33 / 167 >

この作品をシェア

pagetop