王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
ジェフリーにギルバートの壮絶な生い立ちを聞いたリリアンは、しばらく言葉もなかった。それから、沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。
そんな事情があったのならなおさらすべてを話して欲しかった。そうすればもっと彼の支えになることが出来たかもしれないのに。
たかが田舎の子爵令嬢がとんだ思い上がりかもしれないけれど、それでも彼のつらさを分かち合うことも慰めることも出来なかった過去が悔しい。
しかも、モーガン家が没落したのもそれが原因だというのだ。
ギルバートを匿ったことがシルヴィア勢力派に知られ、彼らの不興を買ったらしい。両親の借金など、まったくのでっちあげだ。
ジェフリーはギルバートが近いうちに必ず国王になり敵を一掃することを信じていた。だから耐えろとリリアンに諭したのだ。
けれどそれこそ、正直に話して欲しかったとリリアンは思う。彼女とてその頃はもう十五歳だった。理不尽な状況がギルバートの権力争いに巻き込まれたせいだと知っても、彼を恨んだりはしなかっただろう。むしろ、大切なギルバートのためだと思えば、つらい日々も前向きに乗り越えられたはずだ。
ジェフリーにそう食って掛かったけれど、彼は「幼いお前を巻き込みたくなかった」と言うばかりだった。
結局、いつまでもしっかりせず頼りない自分が悪かったのだと、リリアンは自省とあきらめの溜息を吐くしかなかった。