王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です



王宮にはしばらく滞在することになった。

国王になったとはいえ、ギルバートにはまだまだ信頼出来る味方が必要だ。
ミレーヌの側近であったジェフリーに、ぜひ宮廷官へ戻って欲しいと話し合いをしているらしい。

それに加え、今まで世話になった礼と称してギルバートはすっかりみすぼらしくなってしまったモーガン邸を修復してくれるという。手入れが出来なかった庭も、掃除の行き届かなかった屋敷内も、老朽化した壁や床まで全部綺麗にしてくれるとか。

生まれ育った生家が甦ることには、リリアンも大賛成だった。

そんな理由もあって、ジェフリーもリリアンも話し合いが済みモーガン邸の修復が済むまでのあいだ、オアーブル宮殿に滞在することとなったのであった。

しかし。
ギルバートが振る舞ってくれた豪華な晩餐を終え客室に戻ろうとしたリリアンは、たいへんな驚きに見舞われる。


「お部屋のお支度が整いました。これよりリリアン様はこちらの部屋をお使いください」

王宮の侍従がそう言って案内した新しい部屋は、王家の居住区域でもある南棟の最上階にある、とんでもなく豪奢な部屋だった。

「……何かの間違いじゃない?」

リリアンが部屋の扉を開けてそう呟いたのも無理はなかった。

広々とした部屋は東洋織りの風雅なカーペットが敷かれ、大理石の白い壁には金のつけ柱と天使の彫像が飾られている。大人が三人は寝られそうな大きさの天涯付きベッドには高級な絹モスリンのカーテンが幾重にもかけられ、マットレスは最新式のスプリング入りのものが使われていた。備えつけのソファーセットも暖炉も精緻な細工と金箔加工が施されていて、重厚かつ豪華極まりない。おまけに部屋の隅には贅沢品とされる洗面机まで用意されていたのだ。

いくら王宮の一室とはいえ、あまりにも贅沢過ぎる。リリアンはご丁寧に部屋のテーブルに飾られた花瓶いっぱいのダマスクローズと、いつでも食せるようにと置かれたトレイの菓子とフルーツを眺めながら、顔を引きつらせた。しかし。
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