王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「そろそろ夜着にお召し替えになりますか? その前に湯浴みされるのでしたら、すぐにお支度いたしますが」
唖然とクローゼットを眺めていたリリアンは、ファニーに声をかけられてハッと我に返った。
「そ、そうね……。寝る前に汗を流したいわ」
とりあえず、今夜は頭も身体も休めようと思う。なにせ今日は色々なことがあり過ぎた。長旅の末王宮に着いたと思ったら、まさかのギルバートとの再会。そして驚くべき彼の本当の姿。正直なところ、今でもまだ頭が少し混乱している。
ひとまず今夜はゆっくり休み、明日になったら改めて彼に問えばいい。この異常なほど至れり尽くせりな待遇は何かの間違いではないかと。
そう考えて湯浴みと就寝の支度を頼んだリリアンに、ファニーは恭しく「かしこまりました」と返事すると、てきぱきと準備に取り掛かった。
——翌朝。
窓から差し込む朝の光にぼんやりと目を覚ましたリリアンは、大きな違和感を覚える。
(……あれ? こんな大きな枕、あったかしら……?)
自分の腕が何か大きなものを抱きしめている。いつものくせで枕を抱きしめて寝てしまったのかと思ったけれど、腕の中のものはやけに硬かった。
そしてリリアンは気づく、重い瞼を開いて瞳に映ったものが——優美なギルバートの寝顔だということに。