王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です


「もうギルってば、また零してる! 本当に下手くそなんだから!」

「ご、ごめん。リリー……」

白いテーブルクロスに紅茶の染みが点々とついたのを見て、リリアンは腰に手を当てわざと怒っているように見せた。

「ほら、貸して! 紅茶はこうやって淹れるの。ギルみたいにおっかなびっくり注いでたら、ぜんぶ零れちゃうわ」

ギルバートの手から白磁のティーポットを奪ったリリアンは、得意満面にカップに紅茶を注いだ。ルビー色の液体からフワリと芳醇な香りが立ち込め、ギルバートは思わず目を細める。

「すごい、上手だねリリー。さすが」

コバルトブルーの瞳をにっこりと細め、あどけない笑顔でパチパチと拍手するギルバートの姿は本当に愛らしい。金色の癖っ毛や白くすべらかな肌と相まって、まるで天使のようだ。

リリアンはこの少年の笑顔が好きだった。特に、こんな風に自分に向かって称賛を贈りながら嬉しそうに浮かべる笑顔はたまらない。心の底から満たされた気分になってしまう。

だからつい、ギルバードの前ではなんでも得意げに振る舞ってしまうのだ。本当は自分だって彼に威張れるほど万能ではないくせに。

「まあね。それよりギル、従僕のあなたが私よりお茶の淹れ方が下手ってどういうこと? もっと練習しなきゃ駄目じゃない」

ソーサーに零してしまった雫をさりげなく手で拭いながら、リリアンは椅子に座り直した。
テーブルの上には淹れたばかりの芳しい紅茶に、蜂蜜入りのマカロン、チョコを掛けたシュー生地、アーモンドヌガーのプラリーヌ、フルーツのコンフィズリーなどが並ぶ。

「うん、僕もっと練習するよ。だからリリーが教えて? お茶の淹れ方も……もっと色んなことも」

「仕方ないわねえ。ギルってば、本当に私がいなくちゃ駄目なんだから」

口では呆れたように言いながらも、リリアンの顔は嬉しそうだ。乳白色の頬にうっすらと赤みがさしている。

そうして彼女はティータイムの手ほどきと称して、ギルバートを向かいの席に座らせ一緒にお茶とお菓子を楽しんだ。
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