王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
逞しい腕にぎゅっと抱きしめられながらベッドに寝そべられて、リリアンの心臓は壊れたように早鐘を打った。寝起きにこんなに脈が上がっては、身体に悪いのではと不安になる。
「だ、だ、だからっ! もう子供じゃないんだから、こんなことしちゃ駄目っ!」
厳しく言い放って彼の顔をグイグイと手で押しのけると、ギルバートは不満そうに唇を尖らせながら渋々と離れてくれた。
「大人だからこそ、一緒に寝たいのになあ」
無邪気な口調でとんでもない不満を零され、リリアンはもはやどう叱っていいのか分からない。赤くなった顔で必死に動揺を抑えていると、ギルバートはクスリと口角を上げて微笑み、リリアンの頬に口づけをしてきた。
「な、……っ!?」
「これからは僕が毎日起こしに来るからね。きちんと起きたならおはようのキス、お寝坊のときはまたベッドに潜りこんじゃうから、そのつもりで」
勝手すぎるルールを提示され、リリアンはもはや言葉も出ない。そもそも、国王とはこんなに暇ではないはずだ。朝から幼馴染にちょっかいをかけたり、ベッドに潜りこんで二度寝をしていいはずがない。
「ギ、ギルは忙しい身なんだから、遊んでちゃ駄目でしょう? 起床なら侍女が……」
そこまで言ったリリアンに、彼はにっこりと笑って部屋のドアを指さした。
「僕の寝室、隣なんだ。だから気にしないで、リリーを起こしに来るぐらいなんの手間でもないから」
昨日ファニーが一ヶ所だけ扉の説明をはしょった理由が分かった。そして、ここでの生活がたった一枚の扉を挟んでギルバートと隣り合わせであることに驚く。
ギルバートはベッドから降りるともう一度大きく伸びをして、部屋のカーテンを開けた。眩しい朝日に彼の麗しいブロンドがキラキラと輝く。「いい朝だなあ」とひとりごちる姿は幸福そうだが、リリアンは置いてけぼりを喰らっているような気分だ。
「さて、と。廊下に出て右側の突き当たりがブレックファストルーム(朝食部屋)だから。身支度を整えたらおいで、待ってるから」
ベッドの上で唖然としているリリアンをおいて、ギルバートは上機嫌な様子のままそう言い残し、部屋を出ていった。