王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
王宮は朝食の部屋でさえ豪華だ。リリアンの屋敷の正餐室と同じぐらいの広さがある。
朝の光が眩く射し込むその部屋に、リリアンはギルバートとふたりきりでテーブルを囲んでいた。料理をすべて運ばせ、給仕さえ部屋から払ってしまっている。
「ねえ、ギル。王様って臣下とか親族とかと食事の席を共にしなくていいの?」
ふたりきりの食卓にソワソワしていると、ギルバートはなんとリリアンのグラスに自らミルクを汲みながらそれに答えた。
「僕は食事は基本的にひとりで摂るよ。晩餐会なんかは別だけど。今はだいぶマシになったけど、腹の中で何を企んでるか分からない奴とテーブルなんか囲みたくないからね」
返ってきた答えは思いのほか寂しい言葉で、リリアンはハッと息を呑む。
ようやく平穏を手に入れたとはいえ、彼は今までずっと敵に囲まれて生きてきたのだ。たとえ食事のときだって安らげなかっただろう。
そんな彼が可哀そうに思えてつい顔をしかめてしまっていると、ギルバートはミルクを汲んだグラスを差し出しながら嬉しそうに笑った。
「でもリリーは特別。昔、きみと一緒に食べたご飯は本当に美味しかったから。だから僕、きみとまたテーブルを囲める日をすごく楽しみにしていたんだよ」
あまりに意地らしいことを言うギルバートを、リリアンは抱きしめて慰めてやりたくなる。彼が年上だったと知っても、国王というこの国で最上位の立場だとしても、リリアンにとってギルバートはやはり庇護したい存在だ。昔みたいにお姉さんぶりながらもいっぱい甘やかしてあげたい。
しかし。まるでリリアンのそんな心情を読んだかのように、ギルバートは自分の椅子を彼女の隣へ持ってくると、甘えるように寄り添ってきた。
「ギル?」
「さ、あったかいうちに食べよう。と言うか、食べさせて」
一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。