王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

パチパチと瞬きを繰り返していると、ギルバートはリリアンの手にフォークを握らせ、そこにチキンを包んだパイを刺した。そしてリリアンの手を操って、フォークに刺したパイを自分の口へ運ばせる。

「うん、美味しい」

ニコニコしながら咀嚼するギルバートを、リリアンは呆気にとられて見つめた。この男は十九歳にもなって何をやっているのか。

ギルバートは今度は自分のフォークにホワイトソースの掛かったアスパラガスを刺すと、それを呆然としているリリアンの口元に運ぶ。

「昔はよくこうやってお菓子の食べさせ合いっこしたよね。僕が上手に出来なくてリリーの口の周りをジャムで汚しちゃったら怒られたっけ。あはは」

そんな懐かしいシチュエーションを再現されても困る。今はふたりとも子供ではないのだから。

「ほら、口開けて。今度は汚さないように上手に入れてあげるから……大丈夫だよ」

そう言って口元にアスパラガスを差し出すギルバートの瞳に、妖しい色が浮かんでいるのは気のせいだろうか。

リリアンは困ってしまったが、なんとなく彼の迫力に圧されておずおずと口を開いた。

「ん……」

けれど、アスパラガスについていたソースがやはりリリアンの唇の端を汚してしまう。いや、むしろギルバートがわざと手をぶれさせて汚したようにも見えた。

「ごめんね、ちょっとついちゃった」

そしてふっと口角を上げた蠱惑的な笑みを浮かべるとギルバートは顔を寄せてきて、リリアンの唇についたソースを自分の舌で舐め取った。
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