王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です
「どうされました?」
動きを止めてしまったリリアンに、ファニーが振り返って不思議そうに尋ねる。
「この絵、上手だけどなんだかギルっぽくないわね」
「そうですか?」
リリアンの隣に立ち絵を眺めて、ファニーは小首を傾げた。
「私には、いつもの凛々しい陛下とお変わりないように見えますが……」
ファニーの言葉を聞いて、自分が考えすぎなのかとリリアンは考える。幼い頃の可愛いギルバートの印象が強いから、違和感を覚えたのかも知れない。
「そうかもしれないわね」
リリアンはそう納得すると踵を返し、ファニーの案内で階段を下りて行った。
宮殿の中庭は色とりどりの花を携えた花壇が、大きな噴水を中心に放射状に並べられていた。綺麗な景色にリリアンも胸を弾ませ、小走りで噴水まで向かう。
「わぁ、すっごく綺麗ね。色んな種類の花が咲いてる、さすが王宮のお庭だわ」
外国から輸入したのだろうか、リリアンの見たこともない花がたくさんあった。新鮮な景色に思わずはしゃいでしまい、中庭のあちこちを見て回っていたときだった。
「誰だ。ここで何をしている」
低く威圧的な声が、突然背後から投げ掛けられた。