王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「ロ、ロニーが謝ることないわ！　私は何も知らなかったけど、ギルの力になれていたのなら大歓迎だもの！　だから何も気にしないで」

リリアンの言葉にロニーは目を細めると、「お優しい女性にお育ちになられましたね。ご慈悲に感謝します」ともう一度手にキスを落としてから、立ち上がった。

相変わらず紳士的なロニーの言動に、リリアンは気持ちが高揚してしまう。以前より落ち着きが増したような表情も素敵だ。改めてロニーは魅力的な男性だと認識せざるを得ない。しかも。

「お綺麗になられましたね、見違えました。宮殿の通路から中庭にいらっしゃるお姿をお見かけしたのですが、あなただと分からず不躾に声をかけてしまいました。申し訳ありません」

さりげなく話に賛辞を交えてくるものだから、リリアンの顔はたちまち赤くなってしまう。

「え、ええと、七年ぶりだものね。分からないのも仕方ないわ。それよりロニーは今、何をしているの？」

ぎこちなく言葉を返せば、ロニーは穏やかな笑みを浮かべたまま話を続ける。

「昔と変わらず、ギルバート陛下の側近をやっております。役職は宰相になりましたが。陛下のご命令で昨日まで外交に出ておりまして、今朝がた戻ってきたところなので、ご挨拶が遅れました」

だから昨日は姿を見なかったのかとリリアンは納得した。と同時に、王宮の宰相である彼に傅かれ恭しく扱われていたことに、驚きを隠せない。

「こ、こちらこそ、宰相であられるロニー様に対して無礼な態度を失礼致しました」

いくら彼の今の身分を知らなかったとはいえ、あまりにも馴れ馴れしかった自分の態度を反省する。つい、令嬢と侍従だった頃のつもりで喋ってしまった。もしここにドーラ夫人がいたなら大目玉を喰らっていたことだろう。

けれどロニーはクスッと可笑しそうに肩を竦めると、屈託のない笑顔を向けてきた。

「今まで通りで構いませんよ。私もその方が落ち着きます。どうかリリアン様はわずらわしいものに囚われず、ありのままでいてください」

あまりにも意外な言葉に、リリアンは目をまん丸くしてしまう。いくら昔馴染みとはいえ、こんな特別扱いを受けてしまっていいのだろうか。

どう答えていいか分からず困っていると、ロニーは折り目正しいお辞儀をしてから「それでは、また」と挨拶をして中庭から去って行った。